『四月になれば彼女は』は川村元気作の恋愛小説です。
2024年3月22日(金)には映画の公開も予定されており、佐藤健さんをはじめ、長澤まさみさん、森七菜さんなど豪華キャストが勢ぞろいの注目作品です!
この記事では、そんな『四月になれば彼女は』のあらすじを、ネタバレを含めご紹介していきます。
フジとハル
物語は一通の手紙からはじまります。
主人公の藤代俊(フジ)は、大学時代写真部に所属し、そこで後輩の伊予田春(ハル)と出会います。
「写らないものをとりたい」ハルと、「ポートレイトを撮りたい」フジは互いに惹かれ合い、交際するようになりました。
冒頭の手紙はそんな大学時代の”元恋人”であるハルから九年ぶりに届いた手紙でした。
藤代と弥生
現在、藤代は精神科医として働いています。
同じく医者で獣医師の恋人、坂本弥生と婚約し、結婚式の準備を進めているところです。藤代は弥生との関係を「居心地は悪くない、コミュニケーションが過不足なくすすむ」と思っています。
しかし、夜の営みはしばらくありません。
純の誘い
藤代と弥生の式場見学に付き添いとして来た弥生の妹、純(じゅん)と、その夫である松尾さん。
二人は結婚して三年で子供はなし、純はいまだに夫のことを「松尾さん」と呼びます。
ボディラインがはっきり出た服装に高価なアクセサリーを身にまとう純に、藤代は図らずも目を奪われます。
そんな純から、個人的に相談があると二人きりで食事に誘われた藤代。
酒も回ったところで弥生との夜の営みについて純に尋ねられ、動揺します。
自身が夫以外の男性とも遊んでいることを打ち明けられ、タクシーの中で誘われた藤代でしたが、タイミング良く弥生から着信が入ったことで間違いを起こすことなく帰宅します。
しかし、もし着信がなかったらどうなっていたかと頭を悩ませるのでした。
ハルとの別れ
過去に戻ります。
順調だったハルとの関係に終わりが来たのは、「大島さん」という男性の存在でした。
写真部のOBで白髪交じりの髪とどことなく醸し出すミステリアスな雰囲気からいつも後輩たちに慕われている大島さん。
フジとハルもその一人でした。
しかし、ハルと交際中のある時、フジは突然大島さんに「ハルちゃんのことが好きだ」と告げられます。
妻帯者の大島さんからの告白に動揺するフジでしたが、自身も正直なところ「ハルのことが時々よくわからなくなる」ことを打ち明けます。
後日、ハルから突然電話で「大島さんが死んじゃう、たすけて」と連絡が入ります。
急いで駆けつけると、そこにはホテルのベッドで昏睡状態の大島さんがいました。
すぐに救急車を呼び一命をとりとめますが、その日なにがあったのか、なぜ大島さんの居場所をハルが知っていたのか、フジはハルから聞き出すことができませんでした。
後日二人で病院へお見舞いに行くも、大島さんには会うことはできず、大島さんの奥さんと会話をして帰ろうとします。
すると、突然病院から大島さんが飛び出してきました。
「ハルちゃん、ハルちゃん」と大声で叫び続ける大島さんに、ハルはフジの方を振り返ることなくまっすぐに走って行ってしまいます。
遠ざかる彼女の姿を目で追いながら、フジはもう戻れないと確信するのでした。
その後ハルから連絡がきますが、フジは会うことなく別れを迎えてしまったのです。
ハルからの手紙
再び現在、ハルからの手紙がまた届きます。
そこには大島さんのことが書かれていました。
大島さんからの好意に気づいていたこと、フジの気持ちがわからなかったこと、結果両方とも失ってしまったこと。
そして、大島さんが事故で亡くなったということが記されていたのでした。
弥生の失踪
藤代と弥生の仲に変化はありませんでしたが、あの夜のお詫びとして再びカフェで会った純に、弥生が過去に恋人に執着しすぎていた時代があったことを告げられます。
弥生の知らない過去に藤代は少し驚きました。
そんなある夜、他愛無い会話の中で弥生は泣き出して、「藤代くんはまるで幸せじゃないみたい」と言います。
その後、弥生は何も言わずに失踪してしまいました。
ハルの今と藤代の変化
弥生が失踪してすぐに、かつての写真部の仲間から藤代に連絡がありました。
その内容はハルの死を告げるものでした。
病気で余命間もなかったハルは最期を小さな病院で迎えていました。
そこに呼ばれた藤代は最期までハルがこだわって朝日の写真を撮り続けていたことを知ります。
それはかつて、いつか一緒に見ようと言っていたカニャークマリの朝日を思わせました。
戻って来ない弥生を心配する一方、藤代の友人タスクはそんな藤代の姿を見て、
「まともに探しちゃいない、もっと悩んだり苦しんだりしないんですか?」と問います。
その言葉にはっとさせられた藤代は、家に帰ってから弥生の部屋に足を踏み入れます。
そこには、まだ確認していないハルからの手紙がありました。
手紙には、ハルが余命間もないことを知ってから旅に出ようと考えたこと、またしてもカニャークマリの朝日には間に合わなかったこと、
そしてフジのことを大切に想う気持ちが記されていました。
手紙を確認した藤代は、この手紙を読んだ弥生が何を思ったのか理解します。
また諦めるのか、大切なものを格好悪くても手放したくない、とカニャークマリまで急ぎます。
必死の思いで朝日に間に合わせ、見つけ出した弥生の元へ走っていくのでした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
『四月になれば彼女は』は壮大な恋愛小説です。愛とはなんなのか、一緒にいること、お互いに向き合うことの難しさや、気持ちに正直に生きることの尊さを感じる小説でした。
「嫉妬」や「わくわく感」の無い、大人の恋愛を描いたこの作品は、「恋愛」という存在そのものを丸裸にしようとするある種の残酷さすら感じます。
特に私が印象に残ったセリフは
「神経衰弱みたいなものだと思うんです。一緒に時間を過ごしながら、伏せられているカードを一枚一枚めくって、自分と同じ部分を見つけていく。そうやって、少しずつ誰かを好きになっていくのかなと」
です。
相手の知らない一面を知っていくというコミュニケーションをカードゲームに例えた面白さと、藤代と弥生の、できるだけカードを伏せながら築き上げられてたであろう関係の危うさが感じられて印象的でした!
映画ではこの小説独特の淡い空気感や繊細な人間関係がどこまで表現されるのか見ものですね。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
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